Globridge×ROI×インフォマート特別対談 顧客分析で見えた、飲食店の新規客獲得術
35歳で脱サラして居酒屋を開業し、8年間で直営店78店舗(国内72店舗、海外6店舗)を展開する株式会社Globridge 代表取締役 大塚 誠氏。急成長の秘訣は、既成概念を壊したまったく新しい新規集客と、リピーター化の仕組みづくりにあるそうです。これまでにどのようなお取組をされてきたのか、飲食店向け覆面調査サービスを提供する株式会社ROI 代表取締役の益子 雄児氏と、弊社・株式会社インフォマートの大島 大五郎が伺ってきました。
現場感覚に裏打ちされたロジカルな発想力と、ITの有効活用
大島:今回はGlobridgeの大塚さんに、新規客の獲得に関するノウハウをお伺いします。大塚さんといえば、店頭キャッチの先駆者というイメージがあります。実際、店舗数が80店近くになってもずっとキャッチを続けていたそうですが、始めたきっかけは何だったのでしょう。
大塚氏:2008年の創業当時、店舗の売上が思うように上がらない月が続いていました。今だから言えますが、実際に創業3ヶ月目に資金が底をつき、消費者金融から資金を工面している状況でした(笑)。その時、他のメンバーに店内運営を任せて、自分が外で集客するという役割分担を決めたのです。それがそもそものきっかけで、1店舗目からずっとやっていましたね。
大島:なぜキャッチだったのでしょう。
大塚氏:私はサラリーマン時代に、自動車やゴルフクラブ販売のコンサルタントをしていました。そのとき、お客様の購買率は、接客するスタッフによって大きな差があることを目の当たりにしたのです。そこで、いかにして購買率を上げるか考えるようになりました。そしてわかったことが、むやみに話しかけずに、お客様の意志決定のタイミングを見つけ出してクロージングする、ということでした。意思決定のタイミングにこそ本質があると考えたのです。小売店ならば、お客様が商品を買おうか迷われているときにお声がけします。飲食店の場合、意志決定のタイミングはご来店された後ではなく、ご来店の前、つまり店頭がそのタイミングになります。お店に入るかどうか、ですね。私は飲食店をはじめてからお客様の意思決定のタイミングをまったく見ていなかったことに気がつき、店頭キャッチという方法で飲食店をご利用しそうな方の行動を観察していったのです。
益子氏:なるほど。
大塚氏:私がキャッチしていた場所は300メートルほどの商店街でしたが、他店はどこもキャッチをしていませんでした。つまり、お客様が意志決定するタイミングで、誰もクロージングしていなかったんですね。そこで私がキャッチしていったら、どんどんお店にお送りできるようになりました。店前通行のお客様は総取りでしたね(笑)。
大島:店頭キャッチで獲得されたお客様は、全体の何%くらいでしたか。
大塚氏:99%、ほぼすべてでした。
- 大塚 誠氏(株式会社Globridge 代表取締役)
- 1971年生まれ。栃木県出身。株式会社ベンチャー・リンク入社後、2008年に独立して株式会社Globridge設立。飲食店のコンサルティングや直営・FC運営事業を手がける。
リアルな皮膚感覚をインターネット集客でも活かす
大島:現在、大塚さんはインターネットを積極的に活用して集客されていますよね。店頭キャッチからネットに軸足を移したのはどうしてですか。
大塚氏:やはり、キャッチが法令で規制されるようになったことですね。法律に抵触するつもりは一切なかったので、店頭キャッチは完全にやめました。しかし、当時はキャッチを主体に集客をしていたため、全店舗が空中階で、かつ駅から遠いお店ばかりでした。キャッチを辞めたとたん、店頭から入るお客様はほぼゼロになり、インターネット集客に頼らざるをえない状況に陥ったのです。
大島:そこでインターネット集客の独自分析に取り組むようになったと。
大塚氏:はい。店頭キャッチ同様に、ユーザーがどんなことで意思決定するかがはっきりわかれば、予約率を高めるポイントになると考えたんです。最初は、いろんなグルメサイトに対してユーザーの反応を検証していきました。例えば、ビールや料理、価格などのキーワードや画像をABテストしながら掲載して、サイトごと、曜日ごと、時間帯ごとの反応を調べていったのです。すると、1年ほどでサンプルデータが蓄積され、仮説の精度が上がり、このグルメサイトはこの対策をすれば予約率が上がる、という傾向がわかってきたのです。
益子氏:お客様の意志決定を見計らってクロージングする点は、リアルでもネットでも同じことですね。
大塚氏:そうです。ネットでは実際にお客様を見ることができませんが、店頭キャッチをしていた経験が活きていました。様々なネットユーザーに対して、こちらが最適な導線を用意し、ご予約などの目的を達成いただくことを、私はマーケットアジャストと呼んでいます。この方法が活かせれば、集客だけでなく新規出店時の物件診断や、業績シミュレーション、不振店の業態改善にも有効になります。
大島:実際に、店舗の効果にはどう結びつけたのでしょうか。
大塚氏:当時、立地が悪すぎて撤退を決めていた物件を使って検証をしてみたことがあります。集客の100%をインターネットのみとした戦略です。その店舗の立地で一番ニーズがあるインターネットの集客方法を見つけ出し、そのニーズに一番フィットする業態に作り変えたのです。すると開業から垂直立ち上げが実現し、メディアからの取材も奏効して、今では3ヵ月先までご予約が埋まっている状況です。
- 益子 雄児氏(株式会社ROI 代表取締役)
- 1974年生まれ。茨城県出身。2008年に株式会社ROI入社。2017年7月、代表取締役就任。飲食店を中心に覆面調査による店舗改善・集客支援を手がける。
新規客のリピーター化に必要なこと
益子氏:新規客を集客した後、リピーター化はどうされていますか?
大塚氏:お客様がリピーターになるかどうかは、ご来店時にお客様がどう過ごされてお帰りになったかで決まります。「満足しました、また来ます」と言ってくださっても、本音はわかりません。そこで、私は全店に覆面調査サービス『ファンくる』(※)を導入しました。どんな接客を受けたか、料理を召し上がったかを毎月レポートで計測して、満足度の程度と実際にリピーターになられた数との関係を調べたんです。
益子氏:恐れ入ります(笑)。
大塚氏:実際の覆面調査のレポートやアンケートを見て分析すると、どうすればリピーターになっていただけるかがはっきり見えてきて、非常に役立ちました。弊社のある大衆焼鳥屋でリピーター率を上げる施策をしたところ、ご来店客の80%がリピーターで占められるようになりました。
大島:ネットで新規集客を高めて、アンケート分析からのサービス改善でリピーターを着実に増やすということですね。
大塚氏:そうです。現在は、お客様へのごまかしがきかない時代になったと感じます。ネットで集客に成功しても、悪い口コミは簡単に拡散してしまいますから。飲食店側がCS向上につながると思っているサービスでも、実際はお客様に響いてないこともたくさんあります。ですから、サービスも商品も、圧倒的にお客様に支持されるものにしないと生き残れません。
- 大島 大五郎(株式会社インフォマート 取締役)
- 1972年生まれ。東京都出身。食品メーカー従事後、2000年に株式会社インフォマート入社。フード業界向けに受発注や規格書などの企業間取引事業を手がける。
ITで現状を数値化すれば、解決策が見えてくる
大島:大塚さんの集客方法は感覚を大事にしていますが、それに加えて数値化にもこだわってロジックを組み立てているように思います。
大塚氏:集客だけでなく、業務効率化やコストダウンなども、数値化して課題を探しています。そのためには、検証するための数値を効率的にまとめるための仕組みづくりが先決です。発注や経理の数字を効率的に見る『BtoBプラットフォーム 受発注』を導入したのも、設立後3年目で10店舗になった頃でした。こういったツールを使って数字を追うことが大切だと思います。
大島:今は、どのようなものを重点的に数値分析していますか。
大塚氏:繁盛店って、ある種のオーラがありますよね。例えば匂いや温度、音、明るさなども含めて、どんな要因がオーラになって、お客様の満足度を上げて、お店を繁盛させているのか。店舗ごとに一つひとつ指標を作り、測っているところです。
益子氏:さすがですね(笑)。居酒屋でそこまでやられているところは、なかなかないと思います。
大塚氏:今回私がお話した新規客の獲得に関するノウハウは、2017年の秋に開催されたセミナーで詳しくお話ししましたので、そちらも参考にしていただきたいですね。
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