2019年7月~9月までの食品事故情報

2019年12月17日
食品事故件数が2019年の7月~9月の3か月間で、258件の事故が発生しています。2019年は毎月60件~100件の事故が発生しているのが現状です。そこで、来年2020年4月から新食品表示法の猶予期間が終了し完全施行されることもあり、食品表示の事故を分析し、表示事故の予防に役立て、今後の参考にして頂きたいと思います。

まずは、どのような食品が表示を含む事故の対象の食品になっているのでしょうか。258件の原因食品の内訳を見てみましょう。
図1 食品事故の原因となる食品 [監修]中央法規出版

食品事故の原因食品群の内訳

菓子類が25.6%(66件)、弁当・惣菜、漬物等の調理品12.8%(33件)、農産加工品12.0%(31件)で全体の51%を占めています。詳細は表1をご覧ください。

表1 食品事故の原因食品群の内訳(2019年7月~9月)
食品群 7月 8月 9月 割合
1 菓子類 27 23 16 66 25.6%
2 調理品 10 14 9 33 12.8%
3 農産加工品 13 8 10 31 12.0%
4 調味料及びスープ 8 11 7 26 10.1%
5 水産加工品 13 7 5 25 9.7%
6 麺・パン 9 6 8 23 8.9%
7 畜産加工品 15 5 3 23 8.9%
8 飲料類 3 3 1 7 2.7%
9 酒類 - 5 2 7 2.7%
10 その他(乳製品・米類・健康食品・生鮮品) 6 9 2 17 6.6%
104 91 63 258

全体の258件のうちアレルギー不正表示53件に関する原因食品の内訳を見てみましょう。

図2 アレルギー原因食品 菓子類は少なく9.4%(5件)です。弁当・惣菜、漬物等の調理品が34.0%(18件)と一番多く、次に畜産加工品22.6%(12件)が続いています。インストア加工等の加工調理が多いと思われる加工食品が上位を占めています。調理品と畜産加工品で全体の56.6%を占めています。詳細は表2をご覧ください。 表2 アレルギー食品事故の原因食品群の内訳(2019年7月~9月)
食品群 7月 8月 9月 割合
1 菓子類 1 2 2 5 9.4%
2 調理品 4 9 5 18 34.0%
3 農産加工品 0 0 1 1 1.9%
4 調味料及びスープ 3 0 1 4 7.5%
5 水産加工品 4 2 0 6 11.3%
6 麺・パン 3 1 1 5 9.4%
7 畜産加工品 7 4 1 12 22.6%
8 飲料類 0 1 0 1 1.9%
9 酒類 0 0 0 0 0.0%
10 その他(乳製品・米類・健康食品・生鮮品) 1 0 0 1 1.9%
23 19 11 53

このようなアレルギー不正表示の53食品はどのようなことが原因で不正な表示となっているのでしょうか。
図3 アレルギー不正表示の原因(態様) 表3 アレルギー不正表示の原因(態様)
原因(態様) 割合
1 誤貼付 25 47.2%
2 欠落 19 35.8%
3 中身違い 7 13.2%
4 記載ミス 2 3.8%

最も多い原因は正しいステッカーを商品に貼付する際に誤って他の商品に貼付したことにより、アレルギー不正表示となってしまったものです。せっかく正しい表示を作成しても最後の段階でミスしたことで、とても残念な原因です。このような誤貼付がアレルギー表示ミスの47.2%も占めているのです。2番目の原因は表示作成時にアレルゲンを何らかの理由で原材料から欠落して表示を作成してしまった場合です。他に中身の間違えや工程からのアレルゲンの混入があります。食品群ごとの詳細は表4をご覧ください。
表4 アレルギー不正表示の態様
食品群 誤貼付 欠落 中身違い 記載ミス 割合
1 調理品 8 7 3 0 18 34.0%
2 畜産加工品 8 1 1 2 12 22.6%
3 水産加工品 2 3 1 0 6 11.3%
4 菓子類 2 2 1 0 5 9.4%
5 麺・パン 3 1 1 0 5 9.4%
6 調味料及びスープ 1 3 0 0 4 7.5%
7 農産加工品 1 0 0 0 1 1.9%
8 飲料類 0 1 0 0 1 1.9%
9 米類 0 1 0 0 1 1.9%
25 19 7 2 53

調理品の誤貼付8件の食品には、弁当、おにぎり、惣菜、中華丼等があり、同欠落の7件の食品には、漬物、惣菜、お茶漬け等があり、畜肉加工品の誤貼付8件の食品には、ぎょうざ、肉団子、鶏唐揚げ等があります。

対策方法

原料規格書が1年以上古いものであれば、最新の規格書の情報を入手しましょう。アレルゲン情報の変更の有無を確認するためです。また、工場監査をして、原料メーカーにおける製造ラインの変更によるアレルゲンのコンタミネーションがないか、また使用している原材料のアレルゲンの差異がないかを確認します。 こうして得た正確な情報を記載した原料規格書に基づいて、アレルギー表示を原材料名作成時に反映させます。この時に原材料名に対応させてその直後に括弧書きで「含む」と表示する個別表示の場合は、原料規格書に従って記載します。アレルゲンの一括表示の場合は代替表記・その拡大表記にかかわらず、省略せずにアレルゲンをすべて表示することと新表示ではされています。義務の特定原材料7品目と、推奨の特定原材料に準ずるもの21品目のアレルゲンをすべて対象に表示します。なお、2019年9月19日から推奨表示は21品目に改正されています。 作成後、別の担当者に確認(ダブルチェック)を必ず行ってもらいます。信じて疑えの精神で、ダブルチェックします。ヒューマンエラーの防止のためです。忙しい時ほど手を抜かないという姿勢が大切です。この作業で事故は99%以上防ぐことができると考えます。人の作業は常に100%正確を維持することは経験上困難とされているからです。自分の表示は正しいと錯覚している場合には自分で間違いに気づくことはほとんどできないという人間の弱点があるからです。システムで作成した原材料名であれば、手作業で修正した箇所のみを確認をすることになります。この部分は確認作業が軽減されます。

最も多い原因はラベルの誤貼付によるもの

最も多い原因はラベルの誤貼付によるものです。上記のように正しく表示ラベル作成しても、商品包装にラベルを貼付する際に誤って他の商品ラベルを貼付しては元も子もありません。とても残念な事故です。表5は原因とその対策を表示したものです。基本となる対策ですから、参考にして頂きたいと思います。表示作成から貼付、出荷までの一連の対策が重要です。
表5 原因別対策
原因 発生場所 対策
1 原材料名欄にアレルゲン欠落 表示作成 ダブルチェック
2 ラベル誤貼付、誤包装 工程(包装) 工程管理(商品切り替え時の確認)
3 別商品の表示で作成
4 アレルゲンの混入 工程(配合) 工程管理
(仕込表、洗浄)
5 原材料の使用間違い
6 ラベル貼付忘れ、
原材料名記載漏れ
工程 工程管理(ラベル発行・枚数確認)

最後に全体の258件のうち賞味期限不正表示62件に関する原因食品の内訳を見てみましょう。 図4 賞味期限不正表示の原因食品 アレルギー原因食品では少なかった菓子類が賞味期限では43.5%(27件)で最も多い原因食品となっています。特に製造所ばかりではなく、販売店においても日付を刻印する機会が多いためと思われます。ベーカリー等においても日々刻印する作業があり、忙しさのあまりよく確認せずに販売されることが原因と推察いたします。菓子類と麺・パンで全体の56.4%を占めています。詳細は表6をご覧ください。

表6 原因食品別の賞味期限不正表示の内訳
食品群 誤表記 欠落 期限切れ 語貼付 割合
1 菓子類 20 1 5 1 27 43.5%
2 麺・パン 4 2 2 0 8 12.9%
3 調理品 2 4 1 0 7 11.3%
4 畜産加工品 3 1 0 2 6 9.7%
5 水産加工品 2 0 3 1 6 9.7%
6 農産加工品 2 0 0 0 2 3.2%
7 生鮮品 2 0 0 0 2 3.2%
8 飲料類 0 1 0 0 1 1.6%
9 酒類 1 0 0 0 1 1.6%
10 乳製品 1 0 0 0 1 1.6%
11 調味料及びスープ 1 0 0 0 1 1.6%
38 9 11 4 62

2019年7月~9月までの3か月の食品事故の中から命にかかわるアレルゲンを主に分析してきました。商品ラベルを最後まできちんと商品に貼付するまで安心できないことが理解できました。商品ラベルは単に商品名や価格ばかりでなく、お客様の命を守る大切な情報が表示されたものであることを、表示作成部署ばかりでなく、原料購買から生産、販売まで一貫してラベルの重要さを意識することが事故防止に寄与することと思います。

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