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客単価20%アップ。それでも喜ばれる焼肉店~将泰庵(トッペミート)

2019/02/13
千葉・船橋に本店を置く、高級焼肉店「肉の匠 将泰庵」。2011年の1号店オープン以来、黒毛和牛のメス牛のみを使用して、ちょっと背伸びしたい客にうけています。最近では、よりカジュアルな肉バルや、ハンバーグ専門店といった業態も展開し、国内で4業態7店舗、さらにタイ・バンコクにも進出を果たしました(2019年2月現在)。

デフレが終わらないといわれる現在でも、客単価9,000円、平均月商1,300万円の高級業態で成功しています。その戦略は、日々の原価やFLなどの数字管理と、従業員満足度(ES)を高める取り組みに基づいていました。

集客の要は、原価率100%の看板メニュー

2019年の消費税増税も控え、消費者の低価格志向は依然として続いています。外食産業も苦境に立たされているが、そんな中にあって、将泰庵は気鋭の高級焼肉業態として順調に店舗数を増やしています。扱うのはA5ランク黒毛和牛の雌牛。20歳の頃から焼肉一筋に歩んできたという代表取締役の木原徹氏は、店を持つ以上は食材にこだわりたいと考えていたといいます。

「私もそうですが、やはり料理人は、良い食材を使いたいという気持ちが絶対にあります。現場に立ってもらう料理人のためにも食材の質にはこだわりがありました。とはいえ、採算を度外視しては、経営は成り立ちません。

たとえば、希少部位を使った『幻の花咲タン塩』は原価100%でお出しして、お客様にお値打ち感を味わっていただいています。その分のコストを吸収するためにメニュー構成を考えて原価のバランスをとっており、売上全体の原価率は40%くらいになります。焼肉業態としては決して高い数字ではありません」

原価率を意識しながらも、メニューに一工夫することで顧客に大きな満足を感じてもらうことができます。そのひとつが、将泰庵の名物『飲めるハンバーグ』です。

「ハンバーグをいかに売るかは焼肉店の究極の課題です。材料が端材なので、売れば全体の原価を下げられます。しかしそれは店側の都合です。お客様に喜んでいただくためには、食べたくなるような価値のあるハンバーグが必要です。ですから普通ではありえない、これまで見たことがないものをと考えました」ハンバーグは粗挽きにして肉の食感を残すのが一般的。一方、将泰庵の場合は最も細かい目で2度挽きし、ふんわりとろとろに成形しています。

「常識とは逆の発想です。ハンバーグ工場さんからも『こんなハンバーグは作ったことない』と言われました。でも他社と同じものを作る必要はないんだから、いいんです。“飲める”というネーミングも受けて、すぐに看板メニューになりました」

他では味わえない名物ハンバーグは評判を得て、『飲めるハンバーグ』専門業態を2店舗展開しました。創業以来5年で累計500万個以上が売れているといいます。

「原価をしっかりコントロールすることで、より良い食材が使えます。良いものを出すことでお客様も喜んで来てくださり、またより良い食材が使えるという相乗効果を得ています」

従業員の働きやすさは、顧客満足度も高める

木原氏は開業時から原価率40%、FLコスト60%を保つことを意識してきたといいます。高級業態の将泰庵は、肉は客自身が焼くのではなく、スタッフが目の前で焼くスタイルが基本です。人件費を意識しながら、サービスの質を保つことは可能なのでしょうか?

「FLを意識して人手を減らすと、ひとりの従業員に負担がかかってしまいます。そうしない工夫とは、一言でいえば、生産性をあげることです。生産性は、従業員の負担を軽くする環境を整えることで高めることができます。

弊社は有給休暇消化率100%、月9日の休みを実現させるといった福利厚生を充実させ、働きやすい環境づくりに取り組み続けています。

その結果、従業員の募集をかければ応募もありますし、離職率も低いうえ、従業員の紹介で新たな人材が来てくれたりと、良い循環がうまれています」

従業員満足度(ES)を高めることが、顧客満足度(CS)の向上にもつながるという考え方は、近年注目を集めています。将泰庵では働きやすさを求め、作業のシステム化も積極的に進めています。予約にオンラインシステムを導入したり、食材の発注システム『BtoBプラットフォーム 受発注』を使っているのもその一環とのことです。

「発注をシステム化することで、店長は日々原価を簡単かつ正確に管理できますし、予約もWebサービスに任せることで、店舗運営に集中できます。それがお客様へのサービス向上にもつながると思っています」

全社的な取り組みとして、毎月の会議でシステムから仕入コストなどの数値を算出し、店舗ごとに食材の原価率やFL、売上の一覧を共有し、改善をはかっています。

将泰庵の客単価は、開店当初、高級食材をリーズナブルに味わえる店として、7,000円を想定していました。ですが、現在の客単価は9,000円。実際に客が求めていたのは、価格よりも質でした。相応の対価を払ってでも、より上質なものを食べたいというニーズが、想像以上に多かったのです。

「ニーズにお応えして店の作り込みも半個室を増やして落ち着いた空間にし、器や箸置きひとつにも凝って、より高級感を打ち出しています。本当に価値を感じるもの、満足度が高いものを出していれば、お客様は金額に納得してくださるのだとわかりました」

創業8年で海外進出。新たな業態への拡大も

2019年2月にタイ・バンコクに海外1号店をオープンさせた将泰庵。今後も東南アジアへの進出を続け、海外拠点を増やす展望を描いています。一方、国内でも出店計画は進んでいます。
「インバウンド需要は今後もますます高まるでしょう。グローバル感覚を持つためにも海外出店は続けていきたいです。国内でも、年内2店舗は現在進行中です。出店先のニーズにあわせて、一人焼肉など、少し業態を変えたものになるかもしれません。
ただ、どんな形であっても、原価率とFL比率をしっかり守っていれば、たとえ原価100%メニューを出しても利益は出ます。焼肉業界も低価格や多様な業態で競争が激化していますが、商品の価値に対するお客様の感覚は敏感です。求められるものを見極めながら、ひとつひとつ確実に、繁盛店を作っていきたいですね」

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