飲食店経営に欠かせない、FLコストとFL比率を業態ごとに解説
2019/09/13
外食産業は浮き沈みの激しい業界です。開業3年で7割前後が廃業し、10年続くのは凡そ10%程度とも言われ、美味しい料理を出していれば、必ず繁盛するという単純な世界ではありません。経営者として正しいコスト意識を持ったコスト管理ができなければ店舗経営は続きません。その重要な指標となるのが「FLコスト」と「FL比率」です。
FLコストとは? 仮初の繁盛店にならないために・・・
■FLコスト、FL比率の計算式
FLコストとは食材原価と人件費のことで、FL比率は売上高に占めるFLコストの割合になります。「F」はFoodで食材の原価や材料費を指し、「L」はLabor(労働)で人件費を指しています。売上から経費を差し引いたものが営業利益になりますが、その経費の多くをFLコストが占めるため、把握しておくことは非常に重要です。
計算の結果、営業利益が手元に残らないとなった場合はどうしたらいいのでしょうか?飲食店が取るべき方法は、大きく分けて4つあります。
[1]料理の価格を適正まで引き上げて、売上高をアップさせる。
[2]売上高を維持し、経費の多くを占めるFLコストを圧縮する。
[3]仕入れを見直し、食材の原価を抑える。
[4]調理工程を改善し、人件費を抑える。
「FL比率を適正にすることで営業利益を出す」ことがポイントであることは変わらないため、基本的に考え方はすべて同じと言えます。
FLコスト=食材原価+人件費 |
---|
FL比率(%)=(原価+人件費)÷売上×100 |
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[1]料理の価格を適正まで引き上げて、売上高をアップさせる。
[2]売上高を維持し、経費の多くを占めるFLコストを圧縮する。
[3]仕入れを見直し、食材の原価を抑える。
[4]調理工程を改善し、人件費を抑える。
「FL比率を適正にすることで営業利益を出す」ことがポイントであることは変わらないため、基本的に考え方はすべて同じと言えます。
適正なFL比率とは?
では、適正なFL比率はどの程度でしょうか?一般的にはF、Lともに30%ずつの合計60%が目安とされています。月商500万円程度の飲食店の場合、材料費150万円、人件費150万円、残る200万円で家賃や光熱費などの経費を支払えば、営業利益が7~8%(35万円~40万円)出るのが一般です。
もっとも、実際に小規模飲食店の経営者からは「6割では自分の働いた分の利益が出ない。それ以下に抑えないとやっていけない」という声が多いのも現状です。そうした声を含め、FL比率が55%以下なら優良店、65%を超えると危険ゾーンとなり、FL比率を60%未満に抑えるのが重要な戦略となります。例えば食材原価でもドリンクではなくフードであれば、それを調理する必要があるため、人件費を含む経費がかかるのです。一方でドリンク類は加工がほとんど必要ないことから人件費はあまりかかりません。食材原価の中でドリンクの比率が高ければ高いほど、より営業利益が生み出されるというロジックになるのです。
さらに調理の必要ないドリンクの中でも、ビールよりもウイスキーや焼酎の方が原価は低い傾向にあります。生ビールは保存期間が短く、泡が多くなればその分は廃棄しなければならないため、食材ロスが多いドリンクとされます。生ビールであれば、季節ごとの消費量を過去の実績から予め推測し、廃棄が発生しない程度の量を仕入れることも必要になります。
また系列店による一括大量仕入れで原価を下げる「スケールメリット」を活用する方法も有効です。食材廃棄を防ぐために予定量ぎりぎりに仕入れ、万一売り切れたとしてもお客様が他の物を注文できるぐらいの品揃えをすることも大切と言えます。
なお、肉類や魚類には料理に使えない骨・脂身などが含まれています。食材として使える可食部の割合(歩留まり)も計算することで、より精度の高いフードコストの算出が可能です。
人件費も同様です。お客様がいない時でもスタッフには賃金が発生しています。過去のデータを参考に正確な来店予想を立て、適正人員となるようシフトの見直しやオペレーションの簡略化などを行う必要があります。
もっとも、実際に小規模飲食店の経営者からは「6割では自分の働いた分の利益が出ない。それ以下に抑えないとやっていけない」という声が多いのも現状です。そうした声を含め、FL比率が55%以下なら優良店、65%を超えると危険ゾーンとなり、FL比率を60%未満に抑えるのが重要な戦略となります。例えば食材原価でもドリンクではなくフードであれば、それを調理する必要があるため、人件費を含む経費がかかるのです。一方でドリンク類は加工がほとんど必要ないことから人件費はあまりかかりません。食材原価の中でドリンクの比率が高ければ高いほど、より営業利益が生み出されるというロジックになるのです。
さらに調理の必要ないドリンクの中でも、ビールよりもウイスキーや焼酎の方が原価は低い傾向にあります。生ビールは保存期間が短く、泡が多くなればその分は廃棄しなければならないため、食材ロスが多いドリンクとされます。生ビールであれば、季節ごとの消費量を過去の実績から予め推測し、廃棄が発生しない程度の量を仕入れることも必要になります。
また系列店による一括大量仕入れで原価を下げる「スケールメリット」を活用する方法も有効です。食材廃棄を防ぐために予定量ぎりぎりに仕入れ、万一売り切れたとしてもお客様が他の物を注文できるぐらいの品揃えをすることも大切と言えます。
なお、肉類や魚類には料理に使えない骨・脂身などが含まれています。食材として使える可食部の割合(歩留まり)も計算することで、より精度の高いフードコストの算出が可能です。
人件費も同様です。お客様がいない時でもスタッフには賃金が発生しています。過去のデータを参考に正確な来店予想を立て、適正人員となるようシフトの見直しやオペレーションの簡略化などを行う必要があります。
最近注目のFLR比率とは?
FLだけでなく「R(Rent:賃料)」を加えたFLRコストも重要な指標です。駅前の一等地に店舗を出す場合、賃料はかなりの高額になります。場合によっては、FLコストを除いた経費+営業利益のほとんどを賃料が占めてしまう…なんて事もあるのです。一般的に、売上に対するFLR比率は70%未満にするのが望ましいとされています。
FLRコスト比率(%)=(食材原価+人件費+賃料)÷ 売上×100 |
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業態や店舗によって異なるFとLの比率とその仕組み
FLコストはF・Lともに30%程度が一般的な目安と書きましたが、個々の店舗の状況によって異なるのも事実です。人件費は従業員の熟練度、経験に左右されるのです。
高級料亭や一流の食材を調理して提供するにはそれなりの料理人の腕が必要で、それに伴う接客も求められます。つまり、高いスキルと接客意識を持ったスタッフを集める必要があるため人件費の割合はおのずと高くなります。
逆にファーストフードやファミレスのように、従業員にアルバイトが多い場合、接客もマニュアル化されており、人件費より食材原価の占める割合が高くなります。
高級料亭や一流の食材を調理して提供するにはそれなりの料理人の腕が必要で、それに伴う接客も求められます。つまり、高いスキルと接客意識を持ったスタッフを集める必要があるため人件費の割合はおのずと高くなります。
逆にファーストフードやファミレスのように、従業員にアルバイトが多い場合、接客もマニュアル化されており、人件費より食材原価の占める割合が高くなります。
焼肉、居酒屋など、業態で微妙に異なるFLコスト
■業態ごとFLコストの標準値(例)
たとえばテイクアウトの弁当店ではF40%:L20%、通常のレストランではF33%:L27%程度が一般的とされます。業態によってFが25~45%、Lが15~35%の幅で、自店の特性に合わせ、60%未満を目指すべきと言えるでしょう。
業態 | F(フード) | L(人件費) |
---|---|---|
焼き肉 | 40% | 20% |
ラーメン | 30~35% | 25~30% |
居酒屋 | 28~35% | 25~32% |
ファーストフード | 40% | 20% |
レストラン | 31~35% | 27~29% |
カフェ | 24~35% | 25~36% |
飲食店のFLコスト管理のまとめ
[1]経費の多くを占めるFLコストの管理が、飲食店の店舗経営を左右する
[2]FとLの比率は業態によって異なるものの、計60%未満に抑えるのが理想
[3]R(家賃)も含めたFLR比率は70%未満に抑えるのが望ましい
[4]仕入の工夫やオペレーションの見直しでFLコストは削減できる 営業利益を増やそうと数字だけで安易にFLコストの削減や価格改訂を行うと、売上の減少に結びついてしまいます。まずは自店の状況に合う適正なFL比率を把握することが重要です。そして、実際の数値が適正よりも上ぶれているようであれば、削減できる経費はないか、無駄がないかを確認し、都度改善していくことが求められるのです。
[2]FとLの比率は業態によって異なるものの、計60%未満に抑えるのが理想
[3]R(家賃)も含めたFLR比率は70%未満に抑えるのが望ましい
[4]仕入の工夫やオペレーションの見直しでFLコストは削減できる 営業利益を増やそうと数字だけで安易にFLコストの削減や価格改訂を行うと、売上の減少に結びついてしまいます。まずは自店の状況に合う適正なFL比率を把握することが重要です。そして、実際の数値が適正よりも上ぶれているようであれば、削減できる経費はないか、無駄がないかを確認し、都度改善していくことが求められるのです。